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STICKY 〜WHERE'S MY MONEY〜 インタビュー by Bundai Yamada


2010年にも聴き続けたい2009年の音源~STICKY『WHERE'S MY MONEY』~



昨年末12月、2009年の最後にScarsのSTICKY(以下、スティッキー)のアルバム『WHERE'S MY MONEY』を聴くことができて良かったと思う。インタビューの際、スティッキーは「俺の人生のキーは金か

な」と話していた。なので、タイトルからも分かるように、この1stアルバムのトピックは「金」だ。結局、ほとんど誰の人生のキーも「金」だというのが現実であり真実のように筆者は思う。程度の差はあっても、少なく

とも現在の日本で生きているならそれは普通のことだ。日本の大手新聞社のどの新聞を読んでも毎日一面を飾っているのは大抵は「金」の話だ。だから、スティッキーのアルバムは多くの人間が考えていることをテーマにし

ているとも言えるのだ。だが「金」というのは、毎日目にするし使うものでありながら、それでいて日常ではなぜかその本質的な意味について誰もが建前の奥に隠さなければならないようなところがある。スティッキーのア

ルバムは、この誰しもの裏側にある「金」について、建前を取っ払い色々な角度から描いたものだ。奥に隠されていた人の本音の部分をラップしているわけで内容は明るくはない。奥に行けばいくほど洞窟は暗くなるのだ。

それでもリリースされて少し経ったが、いまだに、このアルバムが良いという評判はよく耳にする。何よりまずフォルムのあるスティッキーのラップがカッコいい。


もちろんエグゼクティブ・プロデューサーを務めたI-DeA(以下、アイディア)の渾身の「仕事」が本作品のクオリティー(アイディアの今年最高のと断言していい)を完全に保証する。また客演勢も漢、林鷹、ブロン

ケー、SHIBA-YANKEE、鬼、SEEDAと完璧の布陣。漢はシーンでも次のアルバムがもっとも待たれるラッパーの一人だし、ブロンケーはSD JUNKSTAにおいて、SEEDA、鬼、林鷹は各々自分のアルバムで、誰もが今年ク

オリティーの高い作品を産んできた一線のラッパーたちだ。ブロンケーはDJ BAKUのアルバムに引き続き完璧なフィーチャリングワークで、この曲を聴いたらさらにブロンケーの音楽を多くの人間が好きになるに違いない。

SEEDAは公式にはこれこそ復帰第一作になるのではないだろうか? スティッキーとアイディアの二人が口を揃えて「(SEEDAはラップに)餓えていた」という状態で作られた、アルバムの最後を飾る「DAY N NITE」。そ

して鬼のリリシズム、MC漢のサグイズム、いつ聴いてもフレッシュな林鷹。アルバムのテンションを上げるシバ・ヤンキー、シンガーのケンジ・ヤマモトも加え、とにかくシーンの第一線の超ピュアなリキッドが落とし込

まれた一枚。そして、それこそがスティッキーというラッパーの実力なのである。超ピュアな「金」の話。意味深い話である。


スティッキーとアイディアの二人に話を聞いた。

****

「何か他のと一緒にはなりたくなかったですからね。こう、やっぱ自分の色を出せたらってところでしたね。スカーズだと表面上のところを押し出せばいいけど、自分のソロワークになると人間味溢れるっていうか、いろん

なわかってもらいたいところだったりとか。そういう、いろんな味が出せればいいなと思ってて。最初に俺がある程度のイメージを持ってて、アイディアに『お世話してもらいたい』っていう話をした。それで(ビートは)

最初はストックから聴かせてもらって、俺が良いなと思うやつをチョイスさせてもらって、そのアイディアのビートを基準に他の人からももらってきたり。それで足りないところをまたアイディアに頼んで作ってもらった

りとか。ラップの方は俺だけではくどいんで、他の人のエッセンスを貰いつつやっていけたらなって感じで進んでいった。俺だけでやってたりとかするとやっぱりむさ苦しいんで。他の人のエッセンスを貰ってたりとかそう

いうとこで、そういうのは上手く消化できたらっていう感じだった。SEEDAに関しては、SEEDAも結構久々に(ラップを)やったときだったんで、かなり餓えてて、完成度にこだわってましたよね。フィーチャリングのな

かで曲に対して一番こだわってくれたのはSEEDAじゃないかなと思いますね…。確実に餓えてましたね、あいつは(笑)」(STICKY)


「『引退する』って言って、CN君のアルバムとか手伝ってたり裏方やってたりとかしたじゃないですか。それでビートをいろんなやつから貰って、超カッコいいビートとか自分で歌いたいと思うビートをCNくんに渡したりと

か。『ラップやりてぇのに歌えねぇ』みたいな。根はラッパーじゃないですか? そういうジレンマを超言ってて、それを発散してたよね(笑)(I-DeA)


「ブロンケーは僕には絶対に出せない色の持ち主。鬼君はレコーディング・スタイルとかもまぁ勉強になりますけど、あの人喋ってるだけで結構勉強させられる部分があったりとかして。やっぱ言い回しの部分だったりと

か、人間的に奥が深い人っすね、あの人は。吸収するところがいっぱいあったとは思いますね。聴いている音楽もいろんなの知ってるんで、俺が『ヒップホップしか聴かねぇ』って話をすると、鬼君は『じゃあ何とかの系統

の何とかってやつを聴いた方がいいよとか。結構色々薦めてきてくれたりとか、良い兄貴分みたいなもんすね。ちょっとヤンチャだけど(笑)。」(STICKY)


ここで、スティッキーは鬼から「言葉の言い回し」なども勉強させられたと話しているが、このアルバムはまさに「言葉の言い回し」にこだわられた作品と言っていい。


「簡単な言葉は不採用にされるっていう傾向があったんで、元から結構書くのに時間かかる方ですけど、今回はもっと考えながら書かないといけないっていうことで、結構時間はかかった。俺はラップで見たまんまを多分言

うんだと思うんですけど、リリックがすごいなと思う人はやっぱ真っ正面だけじゃなくて、色んな視点から見たことを色んな言い回しで伝えられたりとか、そういうことだと思うんですけど。そういうスキルが上がっていけ

ればいいかなと思いますね」(STICKY)


「俺のまわり(ラップが)上手いやつ多いじゃないですか? スカーズにしても。シーダ、ベスにしてもすごい多角的に捉えている。よくスティッキーに天使目線で歌えとか勝手に言ったりとかしてるんですけど、自分の目

で見てる目線もあれば、そこら辺の上から捉える目線もあったり。そこは多分俺が色んな人と仕事して、上手いラッパーがどういう風に表現しているっていうのを自分が勉強してフィードバックしてるっていう。そういうの

をなんかスティッキーに伝えるために…いま完全に思いついた話なんですけどスティッキー、サッカーやっていてるんで。サッカーも司令塔とかがパス出すのに自分の目線じゃなくて、よく上から目線みたいな、フリーな人

を探すのに自分の目線だけじゃなくて常に色んな目線で見てるみたいなのがあって。そういう発想の延長線上で、スティッキーの表現の幅を上手く広げるために実際レコーディングをする前にたわいもない話とかの中で

『今のフレーズ使える』とか。」(I-DeA)


「レコーディング行って、昨日のチャンピオンズリーグ見た? …というとこから始まったりとかして(笑)。」(STICKY)


「YouTubeでハイライトって検索して超ヤバくねぇ、これって。そっからうまく雑談に入って『このフレーズ使えるっしょ』みたいな。後、こいつのパスの目線ヤバいっしょみたいな感じでサッカーとヒップホップの共通す

る部分を探したり。想像力だと思うんですよね。パスをこう出さなきゃいけないみたいな固定概念がないじゃないですか、特にブラジル人とか。監督の言うこととかも無視するし。それくらいスティッキーとは想像力と自分

のなかの固定概念をまず外すって話をしていた。リリック、表現を鍛えるためにレコーディング以上に話していたかも知れない。とにかく表現の幅を広げるためにディスカッションした。」(I-DeA)


「なぜ金だったか? それは生きてくために必要なものだっていう風に思ってて。自分でやるのか? 誰かの下で金を貰って働くのか? 俺とかは自由業かもしんないけど、普通に働いている人とかも結局みんな追い求てい

ると思うんですよ、普通に。ってとこで考えると、やっぱり俺の人生のキーは金かなって思ってて。金があれば笑えるし、悲しいことも悲しくないように感じられると思いますしね。そこはきれいごとなしでやりたかった。

ただ、その金っていうことだけだったら、さっきも言ってたみたいに俺は自分の視点からしか見えないんで、アイディアの智恵をもらって、「金」をいろんな面から見られるような、視点を変えるポイントというのを色々レ

クチャーしてもらって(制作に)八カ月かかった。」(STICKY)


「スカーズの人たちはクォリティーが高いっていうのを知らしめたいんですよね、俺も。自分もスカーズにいるんで。他の同じようなスタイルの人たちのなかでも音楽的なクォリティーで一歩上にいたいっていうのがあっ

て。スカーズはやっぱり違うっていうのを知らしめたい。リリックは10年前は今ほどシーンに追われてなかったというか、とりあえずビートがカッコ良くて、キャラがあっててみたいな。そういうとこから、いまは純粋に曲

の内容に対して耳がいくようになってきたかなと思って。ラッパーのリリックとかフローとかにリスナーも行くようになったなっていう。リスナーの求めるレベルは高くなったと思うんで、やっぱ最低限、クオリティーが低

いと売れないと思う。後にも残らないと思うし。このアルバムはまずコンセプトが金で、その金にまつわるっていうとこが基本軸であった。それで『金にまつわる喜怒哀楽をこう発展していく。こういう曲に仕上げるんでこ

ういうリリックできてくれ』とかって言ったり。仲良いんでそういうこともスティッキーに言ったりした。ただどんな曲でも、どういうトピックでも、とりあえずスティッキーのフィルターを絶対通すっていうのを念頭に置

いて。」(I-DeA)


スティッキーのフィルター。そして、「金」というトピック…。


きっと世の中の日本人の多くが、この年末こんなことを考えているに違いない。「ああ、あの俺の金、一体、どこにいったんだろう?」。自分で使ったのかもしれないし、あるいは…。そんな思いは人を幸せにはしないの

かもしれないが、そこに目を向けたからこそ感じられることや理解できることもあるのだと思う。というか、ラッパーはそういう一面を描き出せる人種なのだと言えるだろう。固定観念から解き放たれた豊かな想像力、そ

して最前線の役者たちとともにスティッキーの1stはまさに今の日本の現実を描き出しているのだ。




2010-01-06 16:09:44投稿者 : SEEDA